「今回の改定、うちには関係ないかな…」と思っていたら要注意です。
2026年6月に施行される介護報酬の期中改定は、通常3年ごとに行われる改定サイクルを前倒しした、異例の措置です。
経営・採用・現場運営のすべてに影響が及ぶ今回の改定。
この記事では、介護・福祉事業所の経営者・管理者が今すぐ押さえておくべき「5つの変化」を、現場目線でわかりやすく整理します。
改定率 +2.03%——「異例の期中改定」とは何か
通常、介護報酬の改定は3年に1度のペースで行われます。
しかし今回は、そのサイクルを待たずに実施される「期中改定」。
なぜ、このタイミングで動いたのでしょうか。
背景にあるのは、政府が掲げる「他産業と遜色のない賃金水準の実現」という方針です。
介護・福祉業界では長年、賃金水準の低さが人材不足の主因とされてきました。
これを放置すれば、業界全体のサービス供給に支障をきたすという危機感から、通常の改定スケジュールを前倒しする異例の判断が下されました。
今回の改定率は全体で +2.03%。その内訳は以下の通りです。
- 介護職員の処遇改善分:+1.95%
- 食費の基準費用額の引き上げ分:+0.09%
経営者へのポイント
改定率の変化は、事業所の収益構造に直接影響します。
サービス別の報酬単位がどう変わるかを早めに確認し、6月以降の収益シミュレーションを今のうちに行っておくことをお勧めします。
処遇改善加算の対象が「介護職員」→「介護従事者全体」へ拡大
これまでの処遇改善加算は、主に「介護職員」を対象としたものでした。しかし今回の改定で、その対象が大きく広がります。
改定後は「介護従事者全体」が対象となり、看護師、リハビリスタッフ、ケアマネジャー、そして事務職員も処遇改善の対象に含まれる見込みです(正規雇用が対象)。
賃上げの目安は以下の通りです。
- 介護従事者全体:月額 +1.0万円(+3.3%)
- 生産性向上・協働化に取り組む介護職員:月額 最大 +1.9万円(+6.3%)
※定期昇給分0.2万円含む
経営者へのポイント
「誰に、いくら払うか」の設計を今すぐ見直す必要があります。
加算をフル活用するためには、職種ごとの給与テーブルとキャリアパス制度の整備が求められます。
「もらえる加算をもらえていない」事態を防ぐため、早めの体制整備を。
訪問看護・居宅介護支援にも処遇改善加算が新設
今回の改定で特に注目すべきは、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスが、新たに対象に加わったことです。
新たに加算対象となったサービスと加算率は以下の通りです。
- 訪問看護・介護予防訪問看護:加算率 1.8%
- 訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション:加算率 1.5%
- 居宅介護支援・介護予防支援:加算率 2.1%
これにより、ケアマネジャーやリハビリ職の処遇改善が、ついに制度的に実現します。
長年「加算がないから賃上げできない」という声が多かった職種が、ようやく改善の対象となりました。
経営者へのポイント
加算を算定するには、体制届出・計画書の提出が必要です。
2026年6月分からの算定を目指す場合、提出期限は6月15日。
準備期間は思ったより短いため、今すぐ対象サービスの確認と書類準備を開始してください。
加算の上位区分に「生産性向上・協働化」が新要件として追加
今回の改定では、処遇改善加算の上乗せ区分(Ⅰロ/Ⅱロ)を算定するために、「生産性向上・協働化」への取り組みが新たな要件として加わりました。
具体的には、以下のいずれかの取り組みが必要となります。
- ケアプランデータ連携システムへの加入
- 生産性向上推進体制加算の取得
- 社会福祉連携推進法人への所属 など
なお、申請時点では「誓約書」の提出で算定が可能となる配慮措置があります。
ただし、令和9年(2027年)3月末までに実際の取り組みを完了させる必要があります。
経営者へのポイント
「DX化は大きな組織がやること」という時代は終わりました。
ICT・DXへの対応が、加算の取得額に直結する時代が来ています。
まずはケアプランデータ連携システムへの加入など、ハードルの低いところから着手することをお勧めします。
食費の基準費用額が1日100円引き上げ(2026年8月〜)
施設系サービスを中心に、もう一つ忘れてはならない変化があります。
食費の基準費用額が、2026年8月から1日あたり100円引き上げられます。
ただし、低所得者については、所得区分に応じた配慮措置が設けられており、据え置きまたは日額30〜60円の引き上げにとどまります。
処遇改善(6月)と食費改定(8月)の2段階で影響が出るため、利用者・ご家族への説明対応も2回必要になる点に注意が必要です。
経営者へのポイント
利用者・ご家族への説明は、早めに・丁寧に行うことが信頼維持の鍵です。
また、食材費のコスト管理の見直しも合わせて行い、収益への影響を最小限に抑える準備を進めておきましょう。
今、事業所がやるべき3つのアクション
今回の改定は、単なる制度変更ではなく「賃上げ」という明確な目的を持った、業界全体への強いメッセージです。
その恩恵を最大限に受けられるかどうかは、準備のスピードにかかっています。
✔処遇改善加算の体制届出を6月15日までに提出
✔給与・キャリアパス制度を改定内容に合わせて見直す
✔ICT・DX対応を進め、上乗せ加算(Ⅰロ/Ⅱロ)の取得を目指す
「改定があった」で終わらせず、「改定を活かした」事業所になるために。
Legacyプロジェクトでは、こうした業界の最新情報を継続的に発信していきます。